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2023.11.30

初号機の調査報告(2023.11.30), セイコーミュージアム銀座の機械時計との比較検討

執筆:中嶋(NIRO)
関係者:中嶋(NIRO)
日時:更新 2024.01.08, 初稿 2023.11.30
場所:セイコーミュージアム銀座

・出石辰鼓楼の機械時計1号機が国産か、輸入品の調査のため、セイコーミュージアムを訪問した。展示されている機械時計の内、出石初号機と同時代に作られた国産時計の構造や歯車(材質や歯形)を調査する目的で訪問した。
・この博物館の専門家は機械学会論文( 上田昭夫,渡邉淳,宮嵜美弥子,久保愛三,松岡裕明, 日本機械学会論文集, 83, 16-00295 (2017)., https://doi.org/10.1299/transjsme.16-00295 )の著者に2人含まれていたが、事前のメールのやり取りで、以前は在籍したが、既に退職されていることが確認されていた。現在は、専門家がいないとのことで、展示品の確認のみ、行った。
・同じものが日本に入ってきたかどうかは明確ではないが、和時計のルーツとなったと思われる1500年頃の機械時計があった。棒てんぷを使用し、歯車の歯形も出石1号機に似ている。上下は板ではないが、上下をつなぐ部材に穴を明け、軸を通す構造も出石1号機に似ている。

・次は振子を使った時計で、年代も出石初号機の少し前である。歯車の歯形は似ているが、構造は異なる。出石1号機は分解された部品の中に振子が含まれているので、和時計の構造に振子を付けたという仮定も捨てがたい。


・この次はセイコーの歴史になるので、出石初号機より新しい話である。歯車1個を近くで写せなかったため、写真の拡大になるが、歯形は和時計時代、出石初号機に近い。

・以上から、
(1)出石1号機が作られた時代、日本では和時計の歯車の歯形に似た歯車が作られており、その後の時代も作られていた。しかし、同じような歯形の歯車が近い時代のヨーロッパでも作られていた。その結果、歯形では、国産/輸入は判定できない。
(2)構造は、同時代のヨーロッパの振り子時計と比べると、和時計の構造に近い。
(3)3年前に国産で作られた造幣局の機械時計は、公開されている写真で見る限り、振子はない。現物を確認したい。
(4)最新の振子という技術をいち早く取り入れ、振子以外は和時計の技術で作った国産品とも考えられる。

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