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コラム:機械時計の科学分析column

2025.06.13

【コラム】「機械時計」の基本的なしくみ ~辰鼓楼のしくみがなんとなくわかる「機械時計解説」~

時計は、「時間の流れ」という目では見えないものを見える化した装置です。
大昔には太陽の動き、星々のめぐり、水の流れ、線香の燃える早さなど、自然の中で一定に変化する現象を利用して時を計っていました。それから長い時代を経て、世界中の発明家・科学者たちが発明や改革を積み重ねていき、より正確で、よりコンパクトな時計へと進化させていったのです。
自然の中で、一定に変化する現象を利用した時計を「非機械時計」というのに対し、辰鼓楼などの機械時計(機械式時計ともいう)は、正しく時間を刻む動きを、機械的に調速している時計のことを指します。

最初期の機械式時計は13世紀末、お祈りの時間を告げる教会の塔時計として作られました。軸に錘(おもり)がついた紐を巻きつけ、錘を落下させて歯車を動かすという仕組みだったといいます。「ぜんまい」を動力源とする機械式時計が登場するのは16世紀です。この仕組みがどんどん小型化し、18世紀には懐中時計が、そして20世紀初期には腕時計が登場します。

 

機械時計は大きく4つの機構に分かれ、
それぞれの機構が少しずつ連結して成り立ちます。

1:時計を動かすエネルギー源「動力機構」
2:歯車が回る速度を「等速」にする「調速機構」
3:正確なリズムを長時間保つ「脱進機構」
4:指針を動かす歯車のシステム「輪列機構」

 

1:時計を動かすエネルギー源「動力機構」

現在の機械時計の動力源の多くが「渦巻状に巻いたゼンマイ」。ゼンマイがほどかれていく力が、機械時計の動力になっています。ゼンマイは香箱車(こうばこぐるま)と呼ばれる入れ物に収納されています。
辰鼓楼のように振り子時計の場合、香箱車に巻かれた紐の先に錘が付けられ、その重さで紐がほどけるときに生じる力が、指針を動かす歯車に伝わります。

 

2:歯車が回る速度を「等速」にする「調速機構」

「調速機構」はいわば、機械時計の心臓部。歯車が回る速度を等速にする最も重要な部分です。腕時計では、「テン輪」と「ヒゲゼンマイ」からなる「テンプ」と呼ばれる部分ですが、これは塔時計の振り子の動きを小型化したものです。ちなみテンプは、ラテン語のtempus(時間、テンポ)に由来します。

 

3:正確なリズムを長時間保つ「脱進機構」

同じぜんまい仕掛けでも、おもちゃの場合は一気に動いてすぐ止まってしまいますが、機械時計は正確なリズムで長時間動き続けることができます。これは、ぜんまいのエネルギーが一度に放出されるのを制御しているからです。そこを司るのが「がんぎ車」と「アンクル」からなる「脱進機構」です。

すべての機械時計は、歯車の回転の停止と解放を一定周期で繰り返す「脱進機」と呼ばれる機構で機械的に調速されています。時計が進む速度を一定に保つ仕組みを持っている、そこが「機械時計の個性」といってもいいでしょう。

<がんぎ車>
カギ型の歯。針を動かす歯車とアンクルと噛み合うことで、調速機構のテンプが刻むリズムを受けとり、規則正しい往復運動に変換しています。

<アンクル>
がんぎ車から伝わった歯車の回転運動を、往復運動に変えて「調速機構(テンプ、振り子)」を動かします。同時に、調速機構からの規則正しい振動で輪列を制御します。

 

4:指針を動かす歯車のシステム「輪列機構」

機械式時計の中は、基本的に5つの歯車から成り立っています。
<一番車>ゼンマイを収納した「香箱車」。香箱車からの動力は最初に二番車に伝わります。
<二番車>軸先に付いた分針を回します。歯車の歯数は60。1周回ると1時間が経過したことを示します。
<三番車>二番車と四番車を回転させる仲介役。回転力の伝達と、速度調節の役割を果たします。
<四番車>1周60秒に増速し、軸先の秒針を動かします。
<五番車>脱進機の一部をなす「がんぎ車」です。

これらの歯車はそれぞれ、「カナ」と呼ばれる小径の歯車と一体となって回る仕組みです。
カナは英語で「ピニヨン」と呼ばれ、このカナを介して互いに重なり合う形で噛み合い、次の歯車に動力運動が伝わっていきます。また、カナを介することで歯車の回転数が調整されます。

 

辰鼓楼・初号機はどうなっているの?

(復元モデル ver.1(データアーカイブ2025.05.07)を使って解説)

辰鼓楼初号機は欠損パーツが多いのですが、一部のパーツが明治初期の日本各地の塔時計に好んで使われたフランスの「モービエクロック」と形が似ていることから、モービエクロックを参考にし、想像しながら3D復元モデルデータを作成中です。

<辰鼓楼 初号機 の 復元模型(ver.1)>

1:輪列機構
2:脱進機構(がんぎ車 + アンクル)
3:錘(おもり)の落下運動 → 回転運動に変換するドラム、待機中
4:振り子
5:錘(おもり)
6:錘(おもり)の落下運動 → 回転運動に変換するドラム、稼働中

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